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「a型事業所」という言葉を耳にして、就労への一歩を踏み出したいと考える一方で、「やめとけ」という声を見て不安を感じていませんか。本当に利用して大丈夫なのか、自分に合っているのか迷っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、a型事業所が「やめとけ」と言われる理由や背景にあるデメリット・リスクを整理しつつ、実際に得られるメリットや向いている人の特徴もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
a型事業所は「やめとけ」と言われる主な理由

a型事業所について調べていくと、否定的な意見や体験談が目に入り、戸惑ってしまう方も少なくありません。実際、「やめとけ」と言われる背景には、制度そのものではなく、事業所の環境や支援体制、働き方のミスマッチなど、いくつかの共通した要因が存在します。
ここでは、利用後に「思っていたのと違った」と感じやすいポイントや、事前に知っておきたい注意点を整理し、a型事業所の課題となりやすい側面を具体的に解説します。
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収入が低い傾向にある
a型事業所は、一般企業で働くことが難しい障害を持つ方が雇用契約を結び、生産活動を行う場です。しかし、その収入(工賃)は、最低賃金が保証されているとはいえ、一般企業の給与と比較すると低い傾向にあります。
厚生労働省の統計によると、令和5年度の全国平均は月額86,752円であり、これだけで生活費を賄うのは難しいと感じる方も少なくありません。事業所の経営状況や提供される仕事内容によって工賃は変動するため、事前に確認が必要です。
支援内容にばらつきがある
a型事業所は全国に多数存在しますが、提供される支援の内容や質には大きなばらつきがあるのが現状です。個別のニーズに合わせたきめ細やかなサポートを提供している事業所もあれば、画一的な支援に留まる事業所もあります。
利用者のスキルアップや一般就労への移行を真剣に考えているか、個別支援計画が適切に作成・実行されているかなど、事業所によって差があるため、事前の情報収集と見極めが不可欠です。
長く在籍すると一般就労へ移行しにくくなる
a型事業所は、一般就労を目指すためのステップとして位置づけられていますが、利用期間の長期化により、一般企業への就職活動から距離が生まれてしまう場合もあります。事業所内の決まった業務に慣れすぎると、一般企業で求められる幅広い業務経験や汎用的なスキルを身につけにくくなり、就職活動のタイミングを逃してしまう可能性もあるでしょう。
そのため、a型事業所を利用する際は、一般就労という目標を明確にしたうえで、計画的に利用期間や次のステップを考えることが大切です。
生産活動の内容が合わない場合がある
a型事業所で行われる生産活動の内容は事業所ごとに異なり、軽作業や清掃、データ入力、製品の組み立てなどさまざまです。選択肢が多い点は魅力ですが、作業内容が自身の興味や適性、将来目指したい働き方と合っていない場合、意欲を保つのが難しくなる可能性があります。
さらに、限られた作業ばかりを続けていると、一般企業で必要とされる幅広いスキルを習得しにくくなり、別の分野へ挑戦するチャンスを狭めてしまうリスクもあるでしょう。
契約内容やルールが不明瞭な場合がある
a型事業所では雇用契約を結ぶため労働基準法が適用されますが、事業所によっては契約内容や就業規則、福利厚生の説明が十分でないケースも見られます。たとえば、雇用期間や勤務時間、休憩や残業の有無、有給休暇の条件、昇給の仕組みなどが曖昧なまま働き始めてしまい、後からトラブルにつながる事例も少なくありません。
利用を検討する際は、雇用契約書や就業規則を事前に確認し、不明点があれば納得できるまで説明を受けることが重要です。
「やめとけ」と言われるa型事業所の本当のメリットと向いている人

「やめとけ」と言われるケースもあるa型事業所ですが、実は多くのメリットがあり、状況や目的によっては有力な選択肢となります。大切なのは、自分に合っているかどうかを見極めることです。
ここでは、A型事業所ならではの利点と、どのような人に向いているのかを具体的に解説していきます。
安定した収入(賃金)が見込める
a型事業所の大きなメリットの一つは、安定した収入(工賃)が得られる点です。a型事業所は利用者と雇用契約を結ぶため、各地域の最低賃金以上の工賃が保証されます。
これにより、障害年金など他の収入源と合わせて、生活の安定を図ることが可能です。経済的な不安が軽減されることで、安心して就労に集中できる基盤が築けます。
障害への理解がある環境で働ける
一般企業で働く中で、自身の障害特性について十分な理解が得られず、悩みを抱える方は少なくありません。a型事業所では、障害に関する知識を持つ職員が在籍しており、一人ひとりの特性に応じた配慮や支援を受けられます。
体調や精神面に不安があるときも相談しやすく、無理のないペースで働けるため、安心感を持って仕事に取り組みやすい環境が整っている点も魅力です。こうした環境は心身の負担を軽減し、安定した状態で働き続けるための土台づくりにもつながります。
スキルアップや就労準備ができる
a型事業所は、単に働く場所を提供するだけでなく、一般就労を目指すためのスキルアップや就労準備の場としても機能します。具体的な業務を通じて職業スキルを習得できるほか、ビジネスマナーやコミュニケーション能力の向上、規則正しい生活リズムの確立など、就労に必要な基礎的な能力の習得が可能です。
将来的には一般企業への就職を視野に入れている方にとって、貴重なステップアップの機会となるでしょう。
就労移行支援との違い
就労支援サービスには、a型事業所のほかに「就労移行支援」という選択肢もあり、両者は目的や役割が異なります。
就労移行支援は、一般企業への就職を目指すための訓練を中心としたサービスで、利用者と雇用契約は結びません。原則として利用期間は2年間と定められており、その間に就職活動のサポートを受けながら、ビジネスマナーやコミュニケーション力、自己管理能力などを身につけていきます。
一方、A型事業所は利用者と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を受け取りながら働く点が大きな特徴です。実際の生産活動を通して、仕事に必要な知識やスキルを身につけると同時に、安定した就労経験を積むことができます。
このように、就労移行支援は「就職に向けた訓練の場」、A型事業所は「働きながら就労能力を高める場」という位置づけになり、自身の状況や目指す働き方に応じて選ぶことが大切です。
a型事業所が適しているケース
a型事業所が特に適しているのは、以下のような方です。自身の状況や目標に合わせて、最適な選択肢かどうかを検討しましょう。
すぐに働き始めたい方
訓練だけでなく、実際の業務に携わりながら収入を得たいと考えている方に向いています。働く経験を早く積みたい場合の選択肢としておすすめです。
安定した収入を希望する方
障害年金だけでは生活が不安定と感じ、一定の収入を得ながら働きたい方に適しています。雇用契約を結ぶため、収入面での安心感を得やすい点が特徴です。
ステップアップとして利用したい方
将来的に一般就労を目指しているものの、まずは障害特性への理解がある環境で実務経験を積みたい方に向いています。無理のない形で就労への準備ができます。
規則正しい生活リズムを確立したい方
生活習慣を整えながら、少しずつ働くことに慣れていきたい方に適しています。安定した通勤や勤務時間を通して、就労に必要な生活リズムを身につけられるでしょう。
「やめとけ」と言われるa型事業所の種類と特徴

a型事業所と一言で言っても、その内容は多岐にわたります。提供されるサービスや仕事内容は事業所によって大きく異なり、利用を検討する際は、自身の興味や得意なこと、将来の目標に合った事業所を見つけることが重要です。
ここでは、代表的なa型事業所の種類とそれぞれの特徴をご紹介します。
製造系
製造系のa型事業所では、工場での軽作業や部品の組み立て、加工、検品といった手先を使った作業が中心です。細かい作業が得意な方や、コツコツと集中して取り組むことが好きな方に向いています。製品の種類は様々で、食品加工や電子部品の組み立て、雑貨の製造など、多岐にわたります。
清掃・軽作業系
オフィスビルや公共施設の清掃、商品の梱包・発送、データ入力などの軽作業を提供するa型事業所です。特別なスキルがなくても始めやすい仕事が多く、体力的な負担を考慮した作業内容が用意されていることも特徴です。体を動かすことが好きな方や、繰り返し作業を正確に行うことが得意な方に向いています。
オフィスワーク系
データ入力、書類作成、電話応対の補助など、事務作業が中心となるa型事業所です。基本的なPCスキルや、指示を理解して正確に作業を進める能力が活かせます。一般企業での事務職を目指している方や、デスクワークを希望する方にとって、実践的なスキルを身につける良い機会となるでしょう。
その他
上記以外にも、a型事業所には様々な種類があります。例えば、農業、ウェブデザイン、カフェ運営、リサイクル品の加工、DTP(出版物の編集・レイアウト)など、利用者の特性や地域のニーズに応じた多様な形態が存在します。自身の興味や適性に合わせた、ユニークな事業所が見つかる可能性もありますので、幅広い選択肢を視野に入れて探してみましょう。
a型事業所は「やめとけ」と言われる前に確認したい注意点
a型事業所を検討する際、「やめとけ」といった声に惑わされず、ご自身にとって最適な場所を見つけるためには、事前の情報収集と確認が欠かせません。ここでは、後悔しないためにチェックすべきポイントを解説します。
事業所の見学と体験利用
実際に事業所へ足を運び、見学や体験利用を行うことは、後悔のない選択につながる重要なステップです。パンフレットやウェブサイトだけでは分からない、現場の雰囲気や利用者の様子、作業内容、職員との相性を直接確かめられます。可能であれば複数の事業所を見学・体験し、比較しながら自分に合う環境を見極めましょう。
提供されるサービス内容の確認
事業所が提供する支援内容が、自身の目標に合っているかどうかの確認も欠かせません。個別支援計画をどのように作成しているのか、受けられる職業訓練の内容は何か、一般就労への移行支援はどのような形で行われているのかを具体的に尋ねてみましょう。
自分の「働きたい」という思いやスキルアップの目標に対して、どこまで寄り添い、実際に支えてくれる体制が整っているかを見極める姿勢が大切です。
工賃や昇給の見込み
a型事業所での工賃は、生活設計に直結する重要な要素です。具体的な工賃の金額だけでなく、昇給制度の有無やその実績、さらには賞与や交通費の支給があるのかどうかを明確に確認しましょう。事業所によっては、工賃体系が異なるため、自身の生活を支える上で十分な収入が見込めるかを事前に把握しておくことが大切です。
職員の質とサポート体制
職員の方々の専門性や対応の丁寧さは、日々の働きやすさに大きく影響します。困りごとや不安なことがあった際に、気軽に相談できる雰囲気があるか、親身になって話を聞いてくれるかなどを確認しましょう。
見学時の対応や、利用者さんの声、インターネット上の口コミなども参考にしながら、質の高いサポート体制が整っているかを見極めることが、安心して働くためのポイントとなります。
契約内容や就業規則の確認
働く上で、雇用契約書や就業規則の内容を事前にしっかり確認することは必須です。労働時間、休憩時間、休日、有給休暇の取得条件、福利厚生、退職に関する規定など、基本的なルールや条件を細部まで把握しておきましょう。不明な点があれば、納得できるまで質問し、すべてを理解した上で契約を結ぶことが、将来的なトラブルを避けるために非常に重要です。
まとめ:a型事業所は「やめとけ」?あなたにとって最善の選択をするために
本記事では「a型事業所はやめとけ」と言われる理由を踏まえながら、デメリットだけでなくメリットや利用前に確認すべきポイントまで解説してきました。
「やめとけ」という声の多くは、工賃の低さや支援内容の差、一般就労への移行の難しさなどにありますが、すべての人や事業所に当てはまるわけではありません。安定した環境で働きたい方や、スキルを身につけながら社会参加を目指したい方にとっては、有効な選択肢となる場合もあります。
大切なのは評判に流されず、自分の状況や目標に合っているかを見極めることです。見学や体験を通して納得できる環境を選び、後悔のない一歩を踏み出しましょう。
障害に関する悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
監修者
院長 根木 淳
愛知県生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、大手金融機関に勤務。2005年、秋田大学医学部卒業後、名古屋市立大学医学部精神科に入局。八事病院、三重県立子ども心身発達医療センターなどで研鑽を積む。京都大学医学部大学院とfMRIによる精神症状の脳機能の共同研究を経て慶應義塾大学大学院精神・神経科に入局。東京大学工学系研究科と連携して自動車運転の認知機能と安全性についての研究を行う。大学病院での診療、戸田病院、秋元病院、ガーデンクリニックなどでの診療業務に併行して、外資系及び国内大手IT企業、外資系大手コンサルティングファーム、テレビ・インターネット通販企業、都市銀行、国内大手証券会社、総合商社、特許翻訳・知財コンサル系企業、建設コンサルタント企業、広告代理店、大手旅行代理店、独立行政法人(公的法務支援機関)、大手不動産、大手企業信用調査会社、グローバルEC系企業、大手アパレル企業、国内最大手スーパーなど、都心大企業を中心に50社以上の産業医として企業のメンタルヘルスに従事。令和2年5月、北越谷駅前さくらメンタルクリニック院長に就任。併行して産業医業務に従事している。 【資格・所属学会など】 日本精神神経学会専門医・指導医 精神保健指定医 日本医師会認定産業医 日本老年精神医学会専門医・指導医