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2026.07.09 依存症

アルコール依存症で病院に行くべき?受診の目安・何科・治療の流れを解説

「お酒の量が増えて自分でもコントロールできない」「飲まないと手が震える」「家族にお酒のことで迷惑をかけている」――そんな状態が続いているにもかかわらず、アルコール依存症で病院に行くべきかどうか迷っている方は少なくありません。アルコール依存症は、意志の弱さではなく、脳の報酬系の機能変化が関与する精神疾患であり、適切な治療によって回復が十分に可能な病気です。この記事では、アルコール依存症の症状や原因、病院に行くべきタイミング、受診すべき診療科、断酒治療・減酒治療を含む治療の流れ、利用できる支援制度までをわかりやすく解説します。

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アルコール依存症とは?意志の問題ではなく脳の病気

アルコール依存症で病院に行くべきかを考えるうえで、まず「アルコール依存症は病気である」という理解が出発点となります。

アルコール依存症の定義と診断基準

アルコール依存症は、長期間にわたる多量の飲酒によって飲酒行動のコントロールが失われ、身体的・精神的・社会的に深刻な問題が生じているにもかかわらず、飲酒を続けてしまう精神疾患です。WHOのICD-10では「アルコール依存症候群」、アメリカ精神医学会のDSM-5では「アルコール使用障害」として分類されています。

ICD-10の診断基準では、飲酒への強い欲求、コントロールの困難、離脱症状の出現、耐性の増大(同じ量では酔えなくなる)、飲酒以外の活動への興味の低下、問題が生じているにもかかわらず飲酒を続けるという6項目のうち、3項目以上が12か月以内に認められる場合に、アルコール依存症と診断される可能性があります。

「飲みすぎ」と依存症の違い

「お酒が好き」「つい飲みすぎてしまう」という段階と、アルコール依存症は異なります。依存症の本質は「自分の意志では飲酒をコントロールできなくなっている」という点にあります。飲む量や時間を決めても守れない、お酒を飲まないと手が震えたり発汗したりする(離脱症状)、飲酒のために仕事や家庭を犠牲にしているといった状態は、単なる飲みすぎではなく依存症のサインである可能性があります。

アルコール依存症は進行性の病気であり、放置すると飲酒量がさらにエスカレートし、身体的な合併症や社会的な問題が深刻化する傾向があります。早い段階で病院を受診し、適切な治療を受けることが回復への近道です。

アルコール依存症の主な症状

アルコール依存症で病院に行くべきかどうかを判断するために、精神面と身体面の両方に現れる症状を確認してみましょう。

精神的な依存(精神依存)

精神依存とは、お酒を飲みたいという強い欲求が持続し、飲酒が生活の中心になってしまう状態です。朝からお酒のことを考える、飲む口実を探す、家族に隠れて飲む、飲み始めると止められず一日中飲み続ける(連続飲酒)といった行動がみられるようになります。飲酒以外の趣味や活動への関心が薄れ、人間関係や仕事上のトラブルが増えてもお酒をやめられないのが特徴です。

身体的な依存(身体依存)と離脱症状

身体依存が形成されると、お酒が体から抜けてくる際に「離脱症状(かつては禁断症状と呼ばれていました)」が現れます。代表的な離脱症状としては、手の震え(振戦)、大量の発汗、不安・イライラ、不眠、吐き気、動悸などがあります。

重症の場合は、離脱後数日でけいれん発作やせん妄(意識の混乱・幻覚・見当識障害)が生じることもあり、これらは命に関わる危険な状態です。離脱症状が出ている段階では、自己判断で急に飲酒をやめることは危険を伴う場合があるため、必ず医師の管理下で断酒を進める必要があります。

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身体の合併症

長年の大量飲酒は、肝臓をはじめとする全身のさまざまな臓器に悪影響を及ぼします。アルコール性肝炎や肝硬変、膵炎、胃腸障害、高血圧、心臓疾患、糖尿病のリスク増大、さらにはアルコール性認知症(脳の萎縮による記憶力や判断力の低下)など、深刻な合併症を引き起こす可能性があります。WHOの調査では、がんや糖尿病よりもアルコールによる健康寿命への悪影響が大きいとする報告もあります。

アルコール依存症の原因

アルコール依存症が生じる原因は一つではなく、生物学的・心理的・環境的要因が複合的に関わっています。

脳の報酬系と耐性の形成

アルコールを摂取すると、脳内の報酬系と呼ばれる神経回路が刺激され、快楽物質であるドーパミンが分泌されます。飲酒を繰り返すうちに脳がアルコールの刺激に慣れ(耐性の形成)、同じ量では満足できなくなって飲酒量が増えていきます。さらに進行すると、アルコールがない状態では脳が正常に機能しにくくなり、離脱症状が出現するようになります。これが身体依存の形成メカニズムです。

心理的・環境的要因

仕事や人間関係のストレス、孤独感、不安やうつ状態からの逃避手段としてアルコールに頼るケースは少なくありません。また、飲酒文化が根付いた職場環境や、家族にアルコール依存症の方がいる場合のリスク増大なども指摘されています。うつ病、不安障害、ADHDなどの精神疾患が背景にある場合は、それらの治療を並行して行うことが重要となります。

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アルコール依存症で病院に行くべきタイミング

以下のような状態に心当たりがある場合は、アルコール依存症で病院に行くべきタイミングが来ている可能性があります。飲酒量をコントロールできず、減らそうとしても失敗を繰り返している、お酒を飲んでいないと手が震える・発汗する・不安が強まるなどの離脱症状が出る、飲酒が原因で仕事や家庭に問題が生じている、健康診断で肝臓の数値に異常が出ている、家族から飲酒について繰り返し指摘されている、記憶をなくす(ブラックアウト)ことが増えたなどです。

内科で肝臓の治療を受けている方も多いかもしれませんが、身体の治療だけでは「飲める体に戻す」ことの繰り返しになりやすいとされています。飲酒行動そのものへの専門的なアプローチが必要であるため、精神科や依存症専門医療機関の受診が重要です。

アルコール依存症は何科を受診すればよい?

アルコール依存症で病院に行くべきと判断した場合、受診先は精神科が基本です。特に依存症の治療プログラムを備えた専門医療機関や、アルコール専門外来を設置している病院を選ぶことで、診断から治療、退院後のフォローアップまで一貫した支援を受けることが可能です。

各都道府県には「依存症専門医療機関」として選定された病院があり、精神保健福祉センターや保健所に相談すれば、お住まいの地域の専門医療機関を紹介してもらえます。本人が受診に抵抗を示す場合は、まずご家族だけでも相談できる窓口を利用してみましょう。

アルコール依存症の治療の流れ

アルコール依存症で病院を受診した場合、一般的に以下のような流れで治療が進められます。

離脱症状の管理(解毒期)

治療の第一段階は、安全にアルコールを体から抜く「解毒」です。離脱症状の重さに応じて、入院または外来で医師の管理下に行われます。手の震えや発汗、不安などの軽度の離脱症状に対しては、ベンゾジアゼピン系薬剤などを用いて症状をコントロールします。重度の離脱症状(けいれんやせん妄)のリスクがある場合は、入院での管理が必要です。解毒期は通常2~3週間程度とされています。

断酒治療と減酒治療

解毒期を経た後の治療目標として、従来は「断酒(完全にお酒をやめる)」が唯一の選択肢とされてきましたが、近年では患者さんの状態に応じて「減酒(飲酒量を減らす)」を目標とする治療も選択肢に含まれるようになっています。断酒が最終的な目標であることに変わりはありませんが、まず減酒から始めることでハードルを下げ、治療への動機づけを高めるアプローチもとられています。

認知行動療法と教育プログラム

アルコール依存症の治療の中核となるのが、認知行動療法をベースとした治療・回復プログラムです。多くの専門医療機関では、全6回~20回程度の体系的な学習プログラムが用意されています。飲酒の引き金となる状況や考え方のパターンに気づき、再飲酒を防ぐための対処法を学びます。怒りのコントロール(アンガーマネジメント)やストレス対処法も治療の重要な要素です。

入院治療の場合は、概ね3か月前後のプログラムが標準的です。解毒期から精神科病棟への移行後、認知行動療法、アルコールに関する勉強会、自助グループへの参加、作業療法などを組み合わせた包括的なリハビリテーションが行われます。

薬物療法

アルコール依存症の薬物療法では、主に3種類の薬が用いられます。まず「抗酒薬(ジスルフィラム、シアナマイドなど)」は、服用中にアルコールを摂取すると不快な症状(吐き気、動悸など)が起きる作用を利用して飲酒を抑制する薬です。次に「飲酒欲求低減薬(アカンプロサート)」は、脳内の神経伝達物質に作用して飲酒への渇望感を和らげる効果が期待される薬で、2013年に日本でも使用可能となりました。さらに「飲酒量低減薬(ナルメフェン)」は、飲酒量を減らすことを目標とする治療に用いられます。

いずれの薬も、心理社会的な治療と組み合わせて使用されるものであり、薬だけで依存症が完治するわけではない点を理解しておくことが大切です。

自助グループの活用

AA(アルコホーリクス・アノニマス)や断酒会は、同じアルコール依存症を抱える当事者が集まり、互いの体験を共有しながら断酒を継続する自助グループです。医療機関での治療と並行して参加することで、孤立感の解消や再飲酒防止に大きな効果があるとされています。家族向けには「アラノン」という家族の自助グループも活動しており、家族自身のケアや適切な関わり方を学ぶ場として活用できます。

家族の対応と注意点

ご家族がアルコール依存症の方に対して行いがちな「借金の肩代わり」や「飲酒の後始末」は、「イネイブリング」と呼ばれ、かえって依存を助長するおそれがあります。本人が自分の飲酒問題と向き合うためには、家族が問題の後始末を引き受けず、適切な距離感を保つことが重要です。家族が依存症についての正しい知識と対応法を学ぶCRAFTプログラムや家族教室を提供している医療機関もあります。

利用できる支援制度

アルコール依存症の治療は保険適用で受けられます。通院が長期にわたる場合は、「自立支援医療制度(精神通院医療)」を申請することで、医療費の自己負担を3割から1割に軽減できる可能性があります。また、借金問題を抱えている場合は、法テラスや弁護士会の無料法律相談、消費者ホットラインなど専門窓口への相談も有効です。

▶ 関連記事:自立支援医療制度のデメリットとは?知っておくべき注意点と利用時のポイント

まとめ

アルコール依存症は、意志の弱さではなく、脳の報酬系の機能変化が関与する精神疾患であり、適切な治療によって回復が可能な病気です。お酒の量をコントロールできない、離脱症状が出る、飲酒が原因で生活に支障が出ているといった状態が続いている場合は、アルコール依存症で病院に行くべきタイミングが来ているかもしれません。

受診先は精神科や依存症専門医療機関が基本です。治療では離脱症状の管理を経て、認知行動療法を中心とした回復プログラムと薬物療法、自助グループの活用を組み合わせたアプローチが行われます。本人が受診に前向きでなくても、まずはご家族だけでも精神保健福祉センターや専門医療機関に相談することが改善への第一歩となります。一人で、あるいはご家族だけで抱え込まず、専門家の力を借りることで、お酒に支配されない生活を取り戻せる可能性があります。お悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

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